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製造現場をデジタル化(DX化)するには?手順や進まない理由を解説

「DX推進を経営層から求められているが、製造現場は紙とエクセルばかりで全く進まない」
「古い設備が多く、デジタル化といっても何から手を付ければいいかわからない」
製造業の生産技術や製造部の担当者様で、このようなお悩みを抱えている方は少なくありません。人手不足や技術継承の課題が深刻化する中、「製造現場のデジタル化」は待ったなしの状況です。しかし、現場の実情を無視したシステム導入は定着せず、失敗に終わるケースが後を絶ちません。
そこで本記事では、多くの企業が直面する「製造現場のデジタル化が進まない3つの理由」を紐解き、着実に現場を変革するための「5つの手順」をわかりやすく解説します。アナログな現場作業を効率化し、競争力を高めるための第一歩を、この記事から踏み出しましょう。
製造現場のデジタル化とは?DXとの違いと重要性
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が先行していますが、製造現場においては、まずその前段階である「デジタル化」の定義を正しく理解することが重要です。
デジタイゼーション・デジタライゼーション・DXの違い
DXに至るまでには、以下の3つの段階があります。
- ①デジタイゼーション(Digitization):「情報のデジタル化」。紙の日報をタブレット入力に変える、アナログメーターを目視からセンサー記録に変えるなど、アナログな情報をデジタルデータに変換することです。
- ②デジタライゼーション(Digitalization):「プロセスのデジタル化」。蓄積されたデータを使って、設備の予知保全を行ったり、生産計画を自動最適化したりするなど、業務プロセスそのものを効率化・変革することです。
- ③DX(Digital Transformation):「ビジネスの変革」。デジタル化されたプロセスを基盤に、新たな顧客価値を創造したり、ビジネスモデル自体を変革したりすること(例:製品の売り切りから、稼働監視サービスの提供へ)。
多くの製造現場がまず取り組むべきは、①の「デジタイゼーション」です。ここを飛ばしていきなりDXを目指そうとすることが、失敗の大きな要因となっています。
なぜ今、製造現場にデジタル化が必要なのか
背景にあるのは、以下の3つの待ったなしの状況です。
- 労働人口減少による「人手不足」:若手採用が難航する中、少ない人数で生産性を維持・向上させるには、デジタルによる省人化が不可欠です。
- ベテラン技術者の引退に伴う「技能継承」:熟練工の「カン・コツ」などの暗黙知を、データとして形式知化しておかなければ、技術力が失われてしまいます。
- 市場ニーズへの対応:多品種少量生産や短納期対応が求められる現代において、紙管理によるタイムラグは致命的な競争力の低下を招きます。
製造現場のデジタル化が進まない3つの理由
必要性は理解していても、なぜ現場のデジタル化はなかなか進まないのでしょうか。多くの企業で壁となっている3つの理由を解説します。
1. 現場の抵抗感とITリテラシーの不足
「今のやり方で特に問題なく回っている」という現場の現状維持バイアスは強力です。特にベテラン社員ほど、使い慣れた紙とペンを手放すことに抵抗感を持ちます。「ITツールは難しそう」「入力作業が増えるだけではないか」という懸念に対し、メリットを提示できていないことが要因です。
2. レガシー設備とデータのサイロ化
製造現場には、導入から20年以上経過した古い設備(レガシー設備)が現役で稼働しているケースが多くあります。これらの設備はネットワーク機能を持たないことが多く、「データが取れない」と諦めてしまいがちです。
また、生産管理システム、在庫管理システム、現場のエクセル台帳などがバラバラに運用されており、データが連携されていない「サイロ化」の状態も、デジタル化を阻む大きな壁です。
3. 費用対効果(ROI)が見えにくい
「デジタル化で年間〇〇時間の工数削減」といった効果予測は立てられても、それが直接的な利益(売上アップやコストダウン)としてどう跳ね返ってくるのかを経営層に説明するのは容易ではありません。結果として、予算決裁が下りず、プロジェクトが頓挫してしまうのです。
製造現場をデジタル化する手順
いきなり全社一斉に導入するのではなく、段階を踏んで進めることが成功の秘訣です。
STEP1:現状の可視化と目的の明確化
まずは、「どの工程がボトルネックなのか」「何のためにデジタル化するのか」を明確にします。「他社がやっているから」ではなく、「検査工程の手書き集計時間をゼロにする」といった具体的な目的を設定しましょう。
STEP2:スモールスタートでの導入検証(PoC)
最初から工場全体に展開するのはリスクが高すぎます。「第1ラインの組立工程だけ」「日報の電子化だけ」といった、影響範囲が限定的で効果が見えやすい箇所から始めます。これをPoC(概念実証)と呼びます。
STEP3:アナログ情報のデジタル化(デジタイゼーション)
PoCで効果を確認したら、実際にアナログ情報をデジタルデータに置き換えていきます。
- 紙帳票 → タブレット入力
- アナログメーターの目視点検 → カメラやセンサーによる自動取得
- 口頭での申し送り → チャットツールでの記録
STEP4:データの連携とプロセスの最適化(デジタライゼーション)
データが蓄積されてきたら、それらを連携させて活用します。例えば、設備の稼働データと生産計画データを紐づけて、「遅れが発生したら自動で再計画を行う」といったプロセスの最適化を図ります。ここからが本格的な業務効率化のフェーズです。
STEP5:全社展開とビジネスモデルの変革(DX)
一つのラインや工場で成功したモデルを、他のラインや他工場へ横展開します。最終的には、蓄積されたデータを活用して、顧客への新たな価値提供や、経営判断の迅速化につなげます。
製造現場のデジタル化で得られるメリット
苦労してデジタル化を進めた先には、現場にとって大きなメリットが待っています。
リアルタイムな状況把握と迅速な意思決定
現場に行かなくても、ダッシュボード上で設備の稼働状況や生産進捗がリアルタイムに見えるようになります。トラブル発生時も即座に検知し、対応指示が出せるため、停止ロスを最小限に抑えられます。
帳票作成・集計工数の大幅削減
「日報を書くためだけに残業する」「月末にエクセルで集計作業に追われる」といった付加価値のない時間がなくなります。空いた時間を、改善活動や技術習得などの生産的な業務に充てることができます。
熟練工の「カン・コツ」の形式知化
設備の調整パラメータや、品質判断の基準など、これまでベテランの頭の中にしかなかった情報がデータとして蓄積されます。これにより、若手への技能教育がスムーズになり、品質のバラつきも抑えられます。
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「手順はわかったが、データの連携や古い設備の対応が難しそう…」と感じた方におすすめなのが、株式会社サンネットが提供する「サンネットDXプラットフォーム」です。
既存設備そのままでスムーズなデータ連携が可能
「レトロフィットIoT」に対応しており、最新の通信機能がない古い設備でも、外付けセンサーや信号灯を活用してデータ収集が可能です。メーカーや年代が異なる設備が混在していても、クラウド上でデータを統合管理できます。
現場担当者が使いやすい直感的な操作性
ITの専門家ではない、製造現場の担当者が使うことを前提に設計されています。直感的なダッシュボードで、「今、現場で何が起きているか」を一目で把握できます。
スモールスタートから全社展開まで柔軟に対応
必要な機能だけを選んで、最小限のコストでスタートできるのも大きな特徴です。まずは特定のラインの「見える化」から始め、徐々に予知保全やエネルギー管理へと機能を拡張していくことができるため、無理なくデジタル化を進められます。
よくある質問(FAQ)
デジタル化は中小企業でも対応できますか?
はい、中小企業でも十分に対応可能です。むしろ、小回りの利く中小企業こそ、身近なツールを使って段階的に進めることで大きな成果を出せます。デジタル化とは必ずしも高価なロボット導入ではなく、アナログな情報をデータに変えることから始まるためです。具体的には、紙の日報をタブレット入力にする、連絡をチャットアプリで行うといった、数万円程度から始められる身近な改善も立派なデジタル化です。無理なく小さな成功を積み上げることで、企業規模に関わらず現場を確実に変えていけます。
導入にかかる費用や期間を教えてください。
費用と期間は導入規模によりますが、クラウド型ツールなら「月額数千円・数日」からスタート可能です。以前のような数百万〜数千万円規模のシステム開発と異なり、現在は初期費用を抑えられるサブスクリプション型のサービスが充実しているためです。例えば、簡易な点検アプリなら即日導入できますが、全社的な生産管理システムとなれば数百万円以上かつ半年〜1年かかる場合もあります。まずは低コスト・短期間で導入できる特定業務のアプリ活用から始め、徐々に適用範囲を広げるのがリスクの低い進め方です。
どのような点に注意すべきですか?
最も注意すべき点は、「デジタル化自体を目的にしない」ことと「現場の同意を得ること」です。現場の課題解決につながらないツール導入は、かえって作業負担を増やすだけで定着せず、失敗に終わる可能性が高いためです。具体的には、トップダウンでいきなり高機能なシステムを入れるのではなく、「手書き集計の手間をなくす」といった現場が実感できるメリットを優先してツールを選ぶ必要があります。目的を明確にし、現場が「便利になった」と感じて使いたくなる仕組みを作ることが成功の鍵となります。
まとめ
製造現場のデジタル化は、決して現場の仕事を増やしたり、監視したりするためのものではありません。「現場の負担を減らし、もっと楽に、もっと良い仕事ができるようにする」ための手段です。
まずは、「手書き日報をなくす」「設備の停止理由を自動で記録する」といった、身近な困りごとの解決から始めてみてはいかがでしょうか。
小さな一歩が、やがて強い製造現場を作る大きな変革へとつながっていきます。

